小泉首相答弁書


平成13年(ワ)第26292号
原  告  ○○○○、外242名
被  告  小泉純一郎、外3名

答 弁 書
平成14年3月19日

 東京地方裁判所民事12部合議D係 御中

(送達場所)

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         野邊寛太郎法律事務所
               被告小泉純一郎訴訟代埋人
           弁護士    野   邊 寛 太 郎
           弁護士   野  邊  一  郎
           弁護士   村 岡 み  ち 代
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                    FAX O3-3501一8229

第1 本案前の答弁

1 原告らの被告小泉純一郎に対する訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
 との判決を求める。

第2 本案前の答弁の理由

1 原告らは、被告小泉純一郎(以下、「被告小泉」という。)に対して、被告小泉が
 平成13年8月13日に靖国神社を参拝したことを違憲とした上で、原告ら各自に対する
 損害賠償の請求、並びに、被告小泉の靖国神社への参拝禁止を求めている。
  しかし、被告小泉は、一個の自然人として、日本国憲法に保障された思想信条並
 びに信教の自由を享受する立場にあり、前記靖国神社の参拝は、その自然人である被
 告小泉の前記の憲法上保障された自由の実現にほかならない。被告小泉は、現在、内
 閣総理大臣の地位にある者であるところ、原告らの請求に従うと、自然人たる被告小
 泉は内閣総理大臣の地位にある限り靖国神社に参拝することができなくなってしまう
 というものである。これはすなわち、被告小泉の基本的人権を侵害することにほかな
 らない。
2 また、もし、原告らが、国の機関たる内閣総理大臣の靖国神社参拝禁止を 請求す
 るというのであれば、自然人たる被告小泉に対する訴えは、明らかに当 事者を誤っ
 ているものと言わざるをえない。
3 すなわち、事件訴訟は、被告小泉の憲法上保障された人権を侵害しようという意図
 のもとになされ、かつ、訴訟の当事者を誤っているものというほかなく、その違法性
 の程度は極めて著しいものと言わざるをえないものであって、その訴訟提起自体を不
 適法とするものと評価されるので、本訴請求はいずれも却下を免れない。

第3 請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの被告小泉純一郎に対する請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。
  との判決を求める。

第4 請求の原因に対する答弁

1 第1項のうち、被告小泉が内閣総理大臣であること、内閣総理大臣として憲法第72
 条、及び、第99条を遵守する義務を負っていることは認め、原告の地位については不
 知。
  他の被告の地位に関する記述は認否の対象外である。
  その余の主張は否認ないし争う。

2 第2項のうち、被告小泉が平成13牢8月13日に靖国神社参拝したこと、同神社本殿
 において一礼したこと、同所において黙とうしたこと、靖国神社の往復に公用車を用
 いたこと、参拝者名簿に内閣総理大臣小泉純一郎と記載したこと、一対の献花をした
 こと、被告小泉が靖国神社に参拝する旨の発言をしていたこと、前記参拝後、被告小
 泉が「公式とか、私的とか。私はこだわりません。」と述べたことは認め、その余は
 否認ないし争う。
  被告小泉は、内閣総理大臣の職務として本件参拝を行ったものではない。公用車を
 使用したのは、警備上の必要性にもとづくものであり、被告小泉の移動の際は、私的
 な場合においても、すべて公用車を使用するものとされている。献花は靖国神社出入
 の花屋に注文されたものであって、献花料3万円は被告小泉の私費より8月13日より前
 に支弁されている。
  なお、参拝者名簿への上記記載は、靖国神社拝殿においてなされたものではなく、
 参集所においてなされたものである。

3 第3項は、被告小泉の認否の対象外である。

4 第4項のうち、靖国神社が宗教法人法にもとづき、東京都知事の認証を受けて設立
 された宗教法人であること、被告小泉が靖国神社本殿において一礼したこと、同所に
 おいて黙とうしたこと、衆議院予算委員会において、被告小泉が、終戦記念日に行わ
 れる政府主催の全国戦没者追悼式に対する質問に対する答弁をしたこと、平成13年8
 月15日の政府主催の全国戦没者追悼式に出席し式辞を読んだこと、同月13日に靖国神
 社に参拝したことは認め、その余は否認ないし争う。
  前記答弁がなされたのは、平成13年5月14日ではなく、同月15日である。また、そ
 の答弁は、正確には、「あなたは、国民とともに天皇、皇后両陛下の出席される戦没
 者追悼式は不十分だと考えているのでしょうか。それとも、十分である、改善の余地
 なんかないんだ、このようにお思いでしょうか。どちらでしょうか。」
 との問いに対して、
 「私は、不十分だとかどうだとか、今とっさに聞かれまして、そう思ったことはない
 んです。」
 と答辞したものであった。
  原告らは、原告らの思想、信条ないし宗教観を被告小泉に押しつけようとしている
 だけのことである。

5 第5項ないし第7項は、否認ないし争う。
  被告小泉の靖国神社参拝によって、原告らの思想、信条ないし信教の自由が侵害
 された事実はない、原告らの主張を精読しても、原告らにおいて、自らの有する宗
 教観あるいは世界観に照らし、被告小泉の参拝を不快に思ったということだけのこと
 であって、原告らの有する基本的人種あるいは権利に対し、何らかの具体的侵害がな
 されたという事実は認められない。
  従って、本訴請求は、いずれも原告らとは別の自然人であり、日本国憲法に保障さ
 れた基本的人権の享受を認められた被告小泉の有する、原告らとは別の思想、信条な
 いし信教の自由を封殺するために本訴請求を提起したものとしか評価することができ
 ないものであり、その請求には何の理由もないので、直ちに棄却されるべきものと思
 料する。