東京都答弁書

平成13年(ワ)第26292号 損害賠償等請求事件
原  告  ○○○○外 242名
被  告  東京都外  3 名


                    答  弁  書


平成14年3月19日



東京地方裁判所民事第12部合議D係 御中


  〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
           東京都総務局総務部訴務室(送達場所)
                 電 話 5388−2496(直通)
                 FAX   5388−1262
           被告東京都指定代理人 和久井 孝太郎
                  同        江 村 利 明
                  同        濱       恒


第1 請求の趣旨に対する答弁

 1 本案前の答弁
 (1)原告らの被告東京都に対する請求の趣旨第2項に係る訴え(違憲確認請求)
   を却下する。
 (2)訴訟費用は原告らの負担とする。
  との判決を求める。

  2 本案の答弁
 (1)原告らの被告東京都に対するその余の請求(損害賠償請求)をいずれも棄
   却する。
 (2)訴訟費用は、原告らの負担とする。
  との判決を求める。
   なお、仮執行の宣言を付するのは相当でないが、仮にその宣言をなされる場
    合においては、担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。
   また、上記1(1)記載の訴えに係る本案の答弁は、次項についての原告らの
  釈明を待って行う。


第2 本案前の答弁の理由

  司法審査の対象は、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)すなわち、当事
 者問の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であることが必要
  なところ、相被告石原慎太郎(以下「被告石原」という。)による宗教法人靖
 國神社(以下「靖国神社」という。)への参拝行為は、そのことによりて、原
 告らの法律上保護された具体的権利ないし利益に何らかの影響を及ぼす余地は
 全くなく、原告らの具体的な権利義務または法律関係とは、およそかかわりの
  ないものである。したがって、原告らの違憲確認を求める訴えは、「法律上の
 争訟」に該当せず、不適法な訴えと言わざるを得ない。
   また、確認の訴えは、現在の権利又は法律関係を対象とするものであるとこ
  ろ、原告らが違憲であることの確認を求めている対象は、被告石原による靖国
 神社への参拝という過去の事実行為であって、確認の訴えの審判の対象たるべ
 き適格性を欠くものであるから、かかる訴えは不適法として却下を免れない。
  なお、かかる訴えを維持されるというのであれば、違憲確認訴訟を提起でき
 るとする一般的根拠は何か、その具体的根拠並びに当事者適格及び確認の利益
 についてどのように考えるのか、について釈明を求める。


第3 請求の原因に対する答弁

 1 1について
 (1)同(1)は、不知。
 (2)同(2)の前段は、相被告に関することにつき、認否しない。
    同後段は、その趣旨が明らかでないので認否しない。
 (3)同(3)の前段は、相被告に関することにつき、認否しない。
   被告石原が東京都の長であり、都を統轄し、都を代表する機関であること
  (地方自治法147条)、及び憲法尊重擁護義務を負うこと(憲法99条)
   は認める。

 2 2について
   相被告に関することにつき、認否しない。

 3 3について
 (1)平成12年(2000年)8月15日、都知事である被告石原が靖国神社
   に参拝したこと(以下「本件参拝」という。)、平成13年(2001年)
   7月末ころから、靖国神社に参拝する姿勢を表明していたことは認める。
  (2) 同(2)は、認める。
    (3)被告石原が、平成12年8月15日の参拝後に、記者からの質問に答えて
   (「記者会見において」ではない。)、(3)記載のような趣旨の発言をしたこ
   とは認め、「東京都知事としての公式参拝であることを明確にした」との主
   張は、争う。

 4 4について
   原告らは、同(7)において「以上のことは、人口1200万人以上を擁する、
  特別に巨大な自治体である東京都の代表として東京都知事が参拝したという本
  件石原参拝においても、同様に妥当する。」としているが、一体「同榛に妥当
  する」という「以上のこと」 というのが、上記の(1)から(6)までのいず れを指
  すのかが全く明らかでない。

       したがって、被告東京都は、原告らに対し、この点について明らかにされる
   よう釈明を求め、認否は釈明を待って行うこととする。

5  5について
(1)原告らの主張は、その趣旨が必ずしも明らかでないが、いわゆる政教分離
 原則が、個人の主観的権利を定めたものであるとの主張であれば争う。
  政教分離原則は制度的保障の規定であって、主観的権利を定めたものでは
 ない(最大判昭和52年7月13日以来の確立した判例理論である。)。
(2)ア 同@は、不知。
  イ 同Aについて
    仏教徒、キリスト教徒が信仰の自由を有していることは、一般論として
   認める。
  ウ 同Bは、一般論として認める。
  エ 同Cは、不知。
(3)同(3)記戟の事実は不知、主張は争う。
  なお、「国の一部をなす東京都」との記載があるが、趣旨が不明であり、
  その意味について釈明を求める。
(4) 同(4)及び同(5)は、争う。
  本件参拝により具体的な権利侵害は何ら発生していない。
6  6について
(1)同(1)@ア記載の、「被告石原の本件両参拝は典型的な宗教行為であり、
 憲法20条1項後段、同条3項に反する明確な違憲行為である。」との主張
 は争う。
(2)同(1)AないしCは争う。なお、被告石原は地方公務員である。
(3) 同(2)のうち、
  第1段落冒頭の、「本件両参拝によって、原告らは前記のとおりの損害を
 被った。」との主張は争い、同第5段落記載の、被告石原が靖国神社に参拝
  する旨発言し、これまでの都知事在任中2年連続続して参拝していた事実
   は、認める。
  その余は、相被告に関する事実につき認否しない。

 7  7について

   争う。


第4 被告東京都の主張

   被告石原の本件参拝は、憲法20条3項にいう「宗教的活動」には当たらず、
  また、本件参拝により、原告らの法律上保護された何らかの具体的権利ないし
 利益が侵害されたものとも言えない。したがって、原告らの損害賠償請求は国
 家賠償法1条の要件を具備せず失当であるから、速やかに棄却されるべきであ
  る。



               付 属 書 類

1代理人指定書                   1通